| 欧米では早くから本の保存性が注目され、強制劣化の試験研究が数多く行われてきました。その結果、酸性紙は20〜25年経過すると茶褐色に褪色し、最後には、手で軽くもんだだけでバラバラに折れ砕け、しなやかさを失ってしまいます。これに対して、中性紙はややしなやかさを失うものの、元のままの形を保ち、劣化状態には極めて大きな差が出ます。
劣化の原因
酸性紙のように紙自体がもっている内的要因と、外的要因によるものがあります。作品が中性紙であっても、それに接しているマットボードや額縁の裏板が酸性であれば作品も酸性化していきます。また、大気汚染など外気の影響でも酸性化するため、外気を取り入れる冷暖房の風が直接当たらない場所を選びます。
博物館や美術館資料が1960年代頃から著しく傷みはじめました。何百年も生きていた紙が、急速に劣化し始めたのは、その頃から導入された空調らしいということです。空調自体は問題はありませんが、昼間入れて夜間切るという繰り返しが行われたため、一日のうちで温度と湿度が急速に変化する環境がつくられてしまい結果として紙の劣化を早めたのです。
紙の劣化は温湿度の変化に影響されます。特に暖房による乾燥は、紙の繊維を変質させます。さらに、近代建築は室内の気密性が高く、特に夜間に冷やされた室内の空気が朝の暖房で暖められると、外気温との差により壁や窓が結露します。そして、そこに掛けてある額縁の中にも湿気が入り、カビが発生する原因にもなります。
酸性化した紙を長持ちさせる
最近、新たに開発された技術では、酸性化した紙を密封した空間にいれ、そこでアンモニアや酸化エチレンのガスを反応させて紙を中和させる方法があり、図書館の本などで適用されています。
酸性化の予防
・中性紙を使用する。
・額装する場合は、作品を中性紙のマットボードでサンドし、作品を留めるテープは中性の物を使用する。また、ふたをした裏板の隙間には、外気と遮断するために水貼りテープなどで目張りする。
・保管の場合は、空調や外気に影響されにくい場所で、中性の保管容器などに入れ、できれば暗室に保管する。
|